民事再生法について
民事再生法は、会社・企業・団体などが対象となる「会社を再生するための法律」として、平成11年に施行されました。その6年後に、個人を対象とした、いわゆる「個人再生法」が施行されるようになり、現在では、このどちらも含めて「民亊再生法」と呼ぶケースが多くなっています。
債務整理には、(自己)破産や任意整理など、いろいろな種類がありますが、民事再生法は、他の債務整理とは明らかに特色が異なっており、その法律名からもその方向性がうかがえます。すなわち、「整理」の色が強い(自己)破産や任意整理とくらべると、明らかに「再生」のための法律であるということがわかります。
そのため、(自己)破産や任意整理では、家財、社財を手放さなければならないのに対し、民事再生法の範囲では、自社物件や社財のすべてを失うということはほとんどないというのが大きな特徴といえるでしょう。もちろん、個人再生についても、家財や財産のすべてを処分する必要がないケースのほうが多いです。
しかしそれだけに、(自己)破産や任意整理にくらべると、踏まなければならない手続が非常に煩雑であり、そのための費用がかなり高くついてしまうというデメリットがあります。そして、このデメリットに関しては、大所帯になる会社よりは、自営業者のほうが重くのしかかってくることが多いと一般的には考えられています。とはいえ、近年では、(自己)破産や任意整理よりは民事再生法を申請したいと考える人のほうが多くなってきているのも事実です。
民事再生法と会社更生法の違い
基本的には、民事再生法と会社更生法というのは、まあ確かに似たイメージを描くのかもしれませんが、しかし実質的にはまったくの別物であるといわなければなりません。民事再生法と会社更生法の違いを知りたいと考える人の多くが、これからそのどちらかを適用したいと考えている人であり、ということは、これらの違いをちゃんと理解できていないという非常に危険な状況であるということを意味するのです。
「民事再生法」というのは、会社を再生するための法律であり、経営者、あるいは経営層に関する規定は原則存在していません。これに対し、「会社更生法」というのは、「既存の経営者ならびに経営層を排除し、新たな経営陣を招いて会社を更生する」という趣旨があります。
つまり、民事再生法で再生された会社の経営者が同じであることも十分あり得るのに対し、会社更生法で更生された会社の経営者が同じであるということは基本的にあり得ない、という大きな違いになります。
なぜこれが「大きな違い」になるのかというと、やはり「経営者」という会社のトップが関係するかしないかの違いであるということで、法律上、税務上の観点では、非常に重要な違いになると考えるべきでしょう。
もちろん、どちらが優れた法律であるかというのは一概にいうことはできませんが、これから会社を再生、もしくは更生したい、あるいはする必要があるという会社にとって、この判断は非常に重要な判断になることは言うまでもありません。
まあ実際のところ、民事再生法を適用したとしても、経営層が入れ替わるケースは少なくありませんが、しかし、民事再生法と会社更生法では、そもそもコンセプト自体が異なるということをご理解いただけるのではないでしょうか。
保有している株の会社が民事再生
そのリスクとは、持ち株の会社が民事再生法を適用した、というケースです。要するに、「倒産」という憂き目に遭ってしまったというリスクです。これはある意味、株式売買特有のリスクであるといえます。株式を保有している会社が民事再生法を適用した場合、一般的には「株価がゼロになり、資産価値がなくなる」と言われます。もちろん、この事実は揺るぎないものになります。ただ、だからといって、その会社の株式を買った額すべてを失うということには、基本的にはなりません。
どういうことかというと、たとえその会社が倒産し、民事再生法を適用したとしても、その日突然株価がゼロになって、株券が単なる紙切れになってしまうということはまずあり得ません。民事再生法を適用した会社は、ほどなくして、いわゆる「整理ポスト」に入ることになります。そうなってしまうと、株価が1円になるまで徐々に値を下げるようにコントロールされますが、それまでは、株価を大幅に下げることは間違いないものの、「売るチャンス」はたくさん残されていることになります。
もちろん、株価は大幅に下げますので、かなりの損益が出ることはまず免れないとは思います。しかし、損益確定を早い段階で行わなければ、その後も株価が上昇するようなことは、たとえばカラ売り注文が急増するなどよほどのことがない限り基本的には考えられませんので、結局株価を下げるのを待つだけになってしまいます。これを避けるためにも、断腸の思いで、できれば整理ポスト入りの前に、どこかで損益確定を行うべきです。
民事再生救済センター?
そんな中でも、ちょっと呆れ果ててことばも出ないような、とんでもない手段の詐欺も存在しています。その方法の中でも、やはり、経済的に窮困し、債務整理をしてこれから何とかして立ち直りたいという人をターゲットにした詐欺行為、あるいは迷惑行為には、心底腹立たしさを覚えます。この手のタイプの詐欺、もしくは迷惑行為はたくさんあるようですが、近年顕著になってきているのが、「民亊再生救済センター」と呼ばれる機関からのスパムメールです。
「民亊再生救済センター」なる団体、機関は実在せず、架空の団体であることが現在のところ判明しています。ただ、中には、「民亊再生救済センター」の部分だけ実在する団体、機関の名称に差し替えて、内容的には「民亊再生救済センター」とまったく同様のスパムメールであるといったケースも多数報告されています。
で、肝心な「内容」についてですが、これは、まずは「あなた(メール受信者)が民亊再生を目前にしている状況であることが判明した」といった趣旨の文言が書かれています。そして、「差し押さえとなると、家や財産を手放さなければならない」という、ちょっとした脅し文句が書かれています。そして極め付けは、「当センターは、そうした事態を回避するために尽力することができる」といった、だれがどう考えても明らかな「ウソ」をのうのうと書きなぐっているのです。
みなさんもご存知のとおり、民亊再生をしても、家財を手放す必要がない場合が多く、また、民亊再生というのは強制されるものではなく、自分の意志で行うものですから、「民亊再生が必要である」などといったことが「判明」することなど絶対にあり得ません。おそらくこの「民亊再生救済センター」にアクセスしてしまうと、個人情報を握られることになりますので、絶対にアクセスせず、徹底的に無視をしてください。
