自己破産したら家族にどんな影響が及ぶ?

一家の主たる者、どんなことがあっても家族を心配させたり泣かせたりすることだけは避けなければならない・・・などと、家族を持つ多くの男性が考えていることと思いますが、しかしやはりどうしてもそういう状況が不可避になってしまうことが起こらないとは限りません。そうした事例でもっとも多いのが、「お金」に関する問題でしょう。中でも、いろいろな事情から「自己破産」という状況を甘んじて受け入れなければならないケースも、近年は増加してきている印象があります。

自己破産したら、家族にはいったいどんな影響が及んでしまうのだろう・・・このことは、経済上の何らかの深刻なダメージを追っている男性なら、だれもが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。ただ、あくまでも「直接的な影響」という意味で言えば、家族にその火の粉が及ぶということは一切ありませんので、これについてはご安心いただいてもかまわないということになるでしょう。

これはどういうことかというと、つまり、「自己破産」というのは、自己破産申告をした本人のみの問題であり、他者がこれに関するいかなる影響をも請け負うことが認められていないからです。

ただし、例外として挙げなければならないのが、「家族が連帯保証人になっている場合」です。これに関しては、万一自己破産申告した本人に何らかのトラブルがあった場合などは、その保証人となっている家族が、その責務を連帯して負わなければならないことになります。

また、たとえばクレジットカードへの加入やローンカードへの加入などの「審査」についての問題もいろいろ指摘されることがあります。これに関しても、基本的には「本人以外は無関係」ですので、家族だからといってそうしたカード関連の審査が急に厳しくなるというようなことは考えられません

ただし、特に銀行系の金融機関によっては、家族のだれかが自己破産申告した場合には、その家族に対する何らかの不利益を覚悟しなければならない場合もあるので、その点だけは留意しておいてください。


自己破産したら生命保険はどうなるの?

「自己破産」ということばを知ってはいても、その意味を深いところまでしっかりと理解している人は意外と少ないようです。「自己破産」という概念は、裁判所が定める「破産法」という法律に基づいているという事実があり、これをもとに、財産その他の考え方が決まってきます。

自己破産の際に問題視されることが多いのが、「生命保険」です。破産法第216条によれば、「裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない」と定められています。「破産手続きの開始」というのは、簡単に言ってしまえば、財産をすべて現金化して、債権者に分配するということを意味します。

とはいえ、たとえばその人が生活するために最低限必要な家財や道具まですべて現金化することはできません。破産申告者の生存、生命にかかわる部分はそこから除外されます。

では、「生命保険」はどのような解釈になるのかというと、「掛け捨て」のタイプの生命保険であれば、掛けた分が財産とならないため、自己破産によって何らかの注意が必要になることはありません。ただし、「積み立て型」の生命保険の場合には、ちょっと注意が必要になります。

積み立て型の生命保険は、解約の際に当然掛け金の全部、もしくは一部が現金化されることになります。そして、それはすべて「自身の財産」とみなされます。ですから、自己破産したら、現金化された金額が20万円を超える場合には、その分も債権者に分配されるケースが多いです。つまり、現金化できる生命保険が20万円以上の資産価値を有する場合には、自己破産する際に解約義務が生じることもある、という解釈になります。

このあたりはすべて管財人の裁量ということになるわけですが、このあたりの詳細な部分については「破産法」の中に明記されていないため、管財人の判断にゆだねるしか方法がないと考えるべきでしょう。

自己破産したらパスポートの申請はどうなる?

自己破産したらパスポートの申請ができないのか」という質問がよく寄せられますが、結論から言えば、「そんなことはない」ということになります。パスポートの申請と自己破産はまったく無関係な事象です。なぜなら、パスポートというのは「海外渡航するための証書」であり、もし自己破産した人が海外渡航の必要に迫られた場合、それが不可能になってしまうからです。

つまり、自己破産したからといって、その人の行動まで制約されて、その人にとって不利益になってしまうようなことはあり得ません。ですから、自己破産したらパスポートの申請ができないのではないか・・・という不安を持っている方は、そんな心配の必要はないということで、どうぞご安心ください。

自己破産したら・・・という「あるある」がいろいろと語られることがあります。もちろん、自己破産したら、その時点でいろいろなデメリットやリスクを抱えなければならないことは間違いありませんが、しかし、そもそも「自己破産」という意味からして曲解される方も少なくなく、あたかも都市伝説のようにあらぬ方向へ解釈が波及してしまうことが少なくありませんので、注意が必要です。

では、なぜそんな根も葉もない話になってしまったのか、これがちょっと不思議なところではありますが、基本的に「自己破産」というのは、裁判所の許可なく引っ越しなどの移動が不可能になるという規則があります。これは当然、逃避を防ぐことが最大の目的となっているわけですが、おそらくそこから派生して、「海外渡航(旅行)はダメ」という発想が生まれてきていると考えられます。

さすがに海外渡航や海外旅行が「逃避」と同じであるということは言えません。もちろん「海外逃避(いわゆる『タカトビ』)」はダメですが・・・という具合に、自己破産とパスポート申請が、どうやらこんな意外なところで結びつけられてしまったようです。なんとなく気持ちもわからないではありませんが、パスポートと自己破産は関係ありません

自己破産したら保証人はどう動くべき?

自己破産の際にその動きが難しくなるのが、「連帯保証人」です。「連帯保証人」ということばも、なんとなくそのことばが単なる専門用語であるように感じられるかもしれませんが、このことばを深く理解している人であれば、「連帯保証人」ということばが「連帯して債務責任を負うことを保証する人物」という意味であることには、すでにお気づきのことと思います。

つまり、被保証人が自己破産したら、当然借金の返済能力がゼロもしくはそれに近い形になるわけですから、そこから先は、被保証人ではなく、連帯保証人のほうに返済の義務が生じることになるわけです。理不尽な話のように聞こえるかもしれませんが、しかしこれは法律の範囲で定められている事象です。

そういったタイミングでは、連帯保証人の動きが非常に重要かつ、非常に難しい選択を迫られることになります。何の面識もない人を保証人に立てることなど基本的にはあり得ないわけですから、当然縁故関係が深い間柄の人同士が、被保証人、保証人の関係を結ぶことになるはずです。しかし、もし万一被保証人が自己破産という状況を受け入れなければならないという事態に陥ると、今度は保証人のほうが、被保証人に対して何らかの調査を行う必要が生じることもあります

何しろ、自分がこれから先長い時間をかけていわれのない借金の返済の義務を負わされることになるわけですから、少しでも現金化できる財産を被保証人が保有しているのではないかというところまで、目を光らせなければならなくなるのです。当然自己破産が確定した時点では、管財人その他の管理が及んでいるはずですから、その時点で何らかの財産が残っているとは考えられませんので、その前の段階で、保証人が被保証人の調査を行う必要があるケースも少なくありません。現金はもちろんですが、有価証券や生命保険、不動産、その他家財道具や高価な日用品などまで、価値のあるものをすべて精査することも考えておかなければならないのが、連帯保証人という立場なのです。

自己破産の時効

自己破産を申告した場合、いろいろとデメリットが発生するという認識は、おそらくみなさんにもあると思います。特に、返済能力がある一般社会人であればだれもが受けることができる各種金融サービス(特に公的な)を受ける権利をはく奪されてしまうことが多いのが、自己破産を申告したことによって生じるデメリットの中でも特に大きなものであるといえるでしょう。

ただ、自己破産を一度申告したら、その後一生そういったデメリットが生じるのかというと、必ずしもそういうことではありません。自己破産を申告してから一定期間が経過すると、徐々にそのデメリットも緩和されることになります。そしてやがて、自己破産に由来するデメリットは完全になくなります。つまり、自己破産には「時効」があるということになります。

自己破産の時効は、一般的には「7年」と考えられる場合が多いです。刑事事件のような明確な時効とは異なり、自己破産の時効に関しては、あくまでも「目安」という程度のものであり、どちらかといえば、金融機関の判断にゆだねなければならないケースのほうが圧倒的に多いです。

ですからたとえば、自己破産から10年以上経過しているにもかかわらず、金融機関に融資の申し入れをしても、その審査に通ることができないというケースが多発するのが、破産申告を申告した人の多くが経験するデメリットになります。これは、融資やクレジットカードへの加入の際には、基本的に「信用情報」を参照されるというところに理由があります。

そしてこの「信用情報」のところには、自己破産の申告についても明記されることになるのです。したがって、融資、クレジットカードへの加入などの際には必ずついてまわる「審査」のタイミングで、どうしても「自己破産」がネックになってしまうのです。とすると、たとえ時効が成立しているということを理由として訴訟を起こしたいと考えたとしても、訴訟で争う理由がないと解釈されてしまうのが実際のところです。


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