持ち家を無くした自己破産後の生活

いろいろな事情があって、最終的に「自己破産」の選択を余儀なくされてしまった人もたくさんいますが、その場合、自分の持家を手放さなければならないというケースも、自己破産の場合には決して珍しくありません。その場合、まずは家を売りに出すことになるわけですが、中には「自己破産を回避したいから家を売りに出す」と考えている人も少なくありません。しかし、この選択が、後々に大きなダメージを残してしまうことも少なくないのです。

中古物件の場合、自分の持家だからといって、自分で勝手に価格をつけることはできません。あくまでも「相場に応じた価格で売りに出される」ということが基本になります。ということは、もしその家が売れたとしても、家のローンが残ってしまうというケースも当然想定されます

自己破産を回避し、たとえば新たにローンを組んで、その家を売却した残りの部分の支払いに充てるという選択をする人は少なくありませんが、しかし、自宅を売却するということは、その時点でその自宅のローン契約も解約されることになり、単に「無計画の借金だけが残る」ということになるのです。つまり、「一括でローンの残りを支払わなければならない」というケースが非常に多くなるというのが、持家の売却の際に生じるデメリットになるのです。

自己破産というのは、借金を帳消しにして、人生をリセットすることであると考えられています。しかしあえてその選択を避けて、今まで通りの人生の延長を歩むというのは、とても危険なことであるという認識が必要になります。もちろん、自己破産することによって生じる新たなデメリット、リスクもたくさんあります。ですから、一概に「どうせ家を売ることになるなら自己破産したほうがいい」という発想はあまりにも安易であるといわなければなりません。

一番重要なことは、自己破産しない場合の既存のデメリットやリスクと、自己破産することによって新たに生じるデメリットやリスクのバランスです。そのバランスを精査して、その先のことを決定すべきでしょう。

住宅ローンと自己破産の関係

自己破産を申請して、これが裁判所から認められると、自己破産に際してのさまざまな手続きが行われることになりますが、その際にいろいろと問題になるのが「住宅ローン」にまつわるゴタゴタです。まあ実際には、管財人のほうでは何のゴタゴタでもなく、自己破産が決定した人間に対して、極めて事務的にその手続きが行われることになるわけですが、しかし当事者からすると、何かと納得できないという部分も少なくないようです。

自己破産と住宅ローンとの関連性を考えるときには、まずは「住宅ローンが完済しているかどうか」によって場合分けして考える必要があります。もうすでに住宅ローンが完済しているということであれば、単に住宅が差し押さえ(没収)となるだけで、それ以外は特に問題が発生するわけではありません。

この時点で、「住宅ローンが完済しているにもかかわらず、なぜ住宅が差し押さえられなければならないのだ!」と憤慨する自己破産者もいらっしゃるようですが、これは大きな勘違いであるといえます。何しろ、住宅ローンの返済以外の何らかの理由によって借金ができてしまい、これを返済する能力がないと判定されたわけですから、自宅が差し押さえられるのは当然のことなのです。

そして、住宅ローンが破綻して自己破産になってしまった場合、もしくは、住宅ローンが完済していない状況で、他の原因で自己破産になってしまったという場合には、自宅が没収されるのではなく、「競売」もしくは「任意売却」の対象になります。

ですから、自己破産の状況に至ってしまった場合、いずれにしても住宅のような資産価値の高いものは、基本的には没収・差し押さえの対象になると考えておいたほうが間違いないでしょう。これについては、住宅ローンの残高の有無が直接的にかかわることではなく、どんな状況でも自宅を手放す必要が生じると考えておかなければなりません。そのあたりのことまでよく考えて、自己破産に踏み切るかどうかを判断することをおすすめします。

賃貸物件と自己破産

自己破産した後の生活が大きく変わるのではないか・・・といった不安を抱えている人は多いです。実際、すでに自分の家を購入済みであるといったケースでは、多くの場合その家を手放さなければならないことになるわけですから、これはやはり「自己破産後の生活が大きく変わってしまう」と考えるのが当然と言えば当然です。

ただ、中には、自分の持家ではなく、賃貸物件にお住まいの方が、何らかの理由によって自己破産してしまうというケースも多々見られます。一説によれば、そういったケースでも、やはりその賃貸物件を明け渡さなければならないとするウワサもあるようですが、自己破産の場合、まずそのような処遇が課されることは基本的に考えられません

そもそも「自己破産」という考え方に対して、大きな誤解と先入観でとらえている人が多すぎるといわなければなりません。これは、当事者にも第三者にも言えることです。よくある誤解として、「自己破産してしまったら、近所の目があるからそのまま住んでいることは不可能だ・・・」という妙な考え方があるようですが、まずは、自己破産したことがなぜ近所にわかってしまうのか、ということが不思議な部分です。

確かに自己破産になると、高価な家財は差し押さえ、没収になることは間違いありませんが、その方法として、いつの時代の話だかはわかりませんが、管財人か債権回収者かだれかが家の中に上がり込んで、「赤札」をベタベタと貼り付け、さあここから今すぐ立ち退きなさいと命じるようなイメージがあるようですが、少なくとも物件の差し押さえに関しては、だれの目にもわからないようプロが秘密裏に行うことである、ということだけは、まずは誤解を解いていただきたいものです。

ですから、自己破産になってしまったからといって、そもそも自分でそのことを口外さえしなければ、だれにもその事実が漏れる心配はないわけですから、賃貸物件にお住まいの方であっても、近所の目など気にする必要はまったくありません


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