個人民事再生とは?
個人民事再生は主に2つの手続きがあり主に、個人商店主や小規模の事業を営んでいる人などを対象とした小規模個人再生手続、主に、サラリーマンを対象とした手続である給与所得者等再生手続、その二つの手続きに住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローンに関する特則)を付け加えることが出来ます。
小規模個人再生手続は債権者の決議を経る必要がありますが給与所得者等再生手続はその必要がありません。そして何より住宅ローンに関する特則が大きく、住宅ローン中のマイホームでも手放さなくても債務整理できるのが大きな特徴です。
個人の民事再生とその期間
これはどういうことかというと、自己破産の場合、どうしても、「資産価値があるものはすべて没収される」という措置であるのに対し、個人民亊再生の場合、たとえば「持家を処分しなくてもすむ」というようなケースも考えられるということです。また、任意整理の場合、返済元本が変わらないのに対し、個人民亊再生の場合、返済元本が減額されることが多いのです。
ただし、個人民亊再生を行った場合、債務整理ならではのデメリットに加え、個人民亊再生特有のデメリットも受け入れなければならないケースが多くなりますので、その点には注意が必要になります。では、具体的にどんなデメリットがあるのかということについて、ここからはお話していきたいと思います。
やはり大きいのは、一定の期間、新規でローンを組むことができないというデメリットでしょう。これは自己破産や任意整理などの際にも受け入れなければならないデメリットのひとつですが、個人民亊再生の場合、さらに、一定の期間は保証人になることができないというデメリットも生じます。
ちなみにこの「一定の期間」というのは、だいたい「5年~7年」と考えられています。これはやはり、ブラックリストに掲載されている期間に相当するものと思われます。
加えて、自己破産や任意整理と違って、裁判所の判断だけで個人民亊再生が認められるものではないというファクターもあります。これはつまり、債務者に対する債権者の了承がないと、個人民亊再生の手続きが完了できないという特徴がある、ということになります。この部分がなければ、自己破産や任意整理などとくらべても、比較的踏み切りやすい債務整理であるといえるかもしれません。
個人事業主の民事再生
債務整理の種類としては、民事再生法が制定された平成12年以前という意味で言えば、やはり「自己破産」と「任意整理」の形で債務整理を行う個人事業主、会社が多かったわけですが、しかし民事再生法が制定されて以降は、(個人)民亊再生を選択するケースが非常に増えてきているというのが実際のところです。
民事再生法というのは、その法律の名称からもわかるように、「自己破産」とか「任意整理」といった債務整理とは目的が異なり、「再生」、「再建」に主眼が置かれている法律であるといえます。したがって、自己破産や任意整理にくらべると、民事再生法を適用するための手続きはかなり煩雑になるというのが特徴です。そのため、弁護士事務所や司法書士事務所に手続きを依頼する必要が生じる場合がほとんどということになります。
もちろん、自己破産や任意整理を選択した場合でも、破産者のほとんどが素人ですから、基本的には弁護士事務所や司法書士事務所に依頼して手続きを踏んでもらうことにはなりますが、しかし手続きが煩雑である分、事務所に依頼した場合には、自己破産や任意整理にくらべると、(個人)民亊再生のほうが高い費用を必要とすることになります。
努力が報われず、残念ながら破産してしまったという個人事業主の方でも、やはり「もう一度がんばりたい」という意識が強い事業主の場合は、たとえ費用が高くかかったとしても、やはり自己破産や任意整理といった「あきらめ」という道を選ぶのではなく、個人民亊再生という「やり直す」という道を選択する人はけっこう多いといえます。そして、民事再生法という法律は、そういう個人事業主の背中を押してくれる法律であるといえるでしょう。
民事再生と破産の違い
具体的には、債務者に対する免責額が異なる、というところがもっとも大きく異なる部分です。自己破産は全額免責されますが、個人民亊再生では、債務額の一部が免責されることになるケースがほとんどです。そのかわり、自己破産の場合、自己所有の財産はすべて処分する必要が生じるのに対し、個人民亊再生ではその必要がなくなります。
また、資格請願に対する処遇も異なってきます。自己破産の場合、一定期間の資格請願がありますが個人民亊再生の場合、これがありません。そして、自己破産においては、「自己破産することができない」と判断されるファクターである「免責不許可事由」がいくつもの項目にまとめられているのに対し、個人民亊再生には、「免責不許可事由」は一切ありません。
ただし、個人民亊再生を申請するための要件(個人再生手続申立要件)が複数定められており、これらのすべてをクリアしていないと、申立さえ認められないという難しさが、個人民亊再生にはあります。
とうことで、自己破産と個人民亊再生の間に生じる差異をしっかりと把握し、これを破産すべきか再生すべきかの指針とすることが非常に重要であるといえるでしょう。「その強い意志さえあれば、だれでも再生できる」というふうに「民事再生法」が曲解されることもありますが、上記の内容からも、それは正しくない認識であるということもご理解いただけるかと思います。
個人民事再生にかかる費用
ただ、個人民亊再生に必要な費用の話になると、実はそれほどメリットが大きいとは言えません。もちろん、個人民亊再生が、自己破産や任意整理にくらべると莫大な費用を要するというようなことはありませんが、自己破産や任意整理とくらべても、決して安くはならないというのも実際のところです。むしろ、ほとんどの事務所で、「債務整理の中でもっとも費用が高い」という形で設定されていると考えておいたほうがよいでしょう。
個人民亊再生の際に必要となる費用は、自己破産や任意整理のときと同じく、手続きを踏んでくれる「弁護士事務所」、「司法書士事務所」に支払う料金ということになります。ただ、個人民亊再生費用に関しては、事務所によってかなり大きく料金体系が異なるという印象を受けます。
また、弁護士事務と司法書士事務所では、多少弁護士事務所のほうが高い印象はありますが、しかし、事務所によって料金が異なるため、うまく選べば、司法書士事務所よりも弁護士事務所のほうが安くできるケースも珍しくないという料金面での特徴があります。
個人民亊再生の費用は、「住宅資金特別条項」の有無によって、弁護士事務所や司法書士事務所の料金が大きくちがってくるというところも重要になります。また、個人民亊再生手続きの報酬とは別に、いろいろと「諸経費」が必要(報酬の倍程度になるケースもある)になってくる場合がほとんどですので、そのあたりも注意が必要です。
